基盤研究(B)一般
 中国古代戦国期における楚文化の学際的研究

平成23年度以降の計画

  1. 研究メンバーによる個人研究

  2. 研究メンバーの訪中

1 研究メンバーによる個人研究

 昨年度に引き続き、研究代表者・分担者は研究協力者と鋭意連絡を保ちながら、下記の分担に基づいて個人研究を進める。

1.伝世資料から見た楚文化と中原文化

 大野は引き続き『楚辞』や楚地出土文献と、中原の諸文献との比較研究を進め、『楚辞』作品の成立や記録に至るまでの経緯解明に向けて一歩を進める。谷口は、漢郊祀歌の訳注を完成するとともに、各篇の性質と全体の統一原理について、「九歌」との関連に留意しつつ考察し、学会発表及び論文作成を行う。研究協力者・矢田尚子は、後漢王逸『楚辞章句』の注釈態度と、それが楚辞・屈原評価に与えた影響について考察を行う。研究協力者・中村貴は、楚地に流布したとされる「直躬説話」を取り上げ、その成立背景から楚地の地域的特性について考察を行う。

2.出土資料から見た楚文化と中原文化

 石川は周文王受命樹「梓」との比較を通じ、楚辞橘頌篇の「橘」は天上から楚懐王王居に降生した天命将来樹であり、上博楚簡の李頌篇の「李」も楚王の天命将来樹であることを特定するなどし、古代楚王国の天命招来問題と楚辞諸篇の緊密な関係を体系的に解明する。研究協力者・吉冨透は、新たな戦国楚簡と『楚辞』の関係について、内容だけではなく戦国楚文字の表記と音声からも考察を行う。

3.『楚辞』研究の新手法

 田宮はまず6月の楚辞国際学術研討会において前年度に行った後漢王逸『楚辞章句』全巻についての考察に基づく『楚辞章句』が提示する屈原イメージの祖型についての見解を発表する。更に、朱熹『楚辞後語』における離騒テーマ語彙の検索結果について考察する。研究協力者・田島花野は、『楚辞』招魂篇と大招篇について、飲食・住居・歌舞等の描写を両作品で比較し、考察を行う。研究協力者・野田雄史は、引き続き楚辞諸篇全体の押韻状況のまとめを行ない、6月の国際学会で発表する。  また年度末には全体研究会を開催し、各メンバーの研究を有機的に関連づけるべく統括と調整を行う。

2 研究メンバーの訪中

 平成23年6月4日~6日に中国福建省で開催される楚辞国際学術研討会に研究者及び研究協力者が参加及び学術発表し、研究水準を高めるとともに、海外研究協力者を含めた研究者諸氏との学術交流を行う。

 平成24年度には、各メンバーの研究内容に応じて、中国の現地調査を日中共同で行う。現時点では大野と石川が以下の調査を予定している。

 なお、万一社会情勢の急変等で聘日や訪中が不可能になった場合は、Eメール等の手段で中国側メンバーと連絡を取り合いつつ、日本側で行える個人・共同研究を優先して行うこととする。

今日昨日合計
1487965