基盤研究(B)一般
 中国古代戦国期における楚文化の学際的研究

平成22年度の計画

  1. 研究メンバーによる個人研究

  2. 海外研究協力者の聘日

1 研究メンバーによる個人研究

 昨年度に引き続き、研究代表者・分担者は研究協力者と鋭意連絡を保ちながら、下記の分担に基づいて個人研究を進める。

1.伝世資料から見た楚文化と中原文化

 大野は『楚辞』や楚地出土文献と、中原の諸子や史書との比較を進め、両者の交渉についての考察を行う。谷口は漢郊祀歌の注釈作成を遂行し、そこにみられる『楚辞』との関連や、楚文化の受容と変容について考察する。また研究協力者・矢田尚子は、前漢期までの楚辞や屈原に対する評価と、後漢王逸『楚辞章句』におけるそれとを比較し、その差異について考察を行う。同・中村貴は引き続き『楚辞』および楚に関連する伝世文献に拠りながら、「楚」と「中原」との相関関係について考察を行う。

2.出土資料から見た楚文化と中原文化

 昨年度に引き続き、研究協力者・石川三佐男は『楚辞』作品・伝世資料全般・考古出土資料(同地同時資料及び近年大量に発見されている戦国期の出土資料を含む)の比較考証をさらに推し進めていく。同・吉冨透は出土資料を基に新たな『楚辞』の読解を進め、漢代以後の解釈と比較考察する。また戦国時期の新出楚辞類作品と『楚辞』屈原・宋玉作品との比較考察を行う。

3.『楚辞』研究の新手法

田宮は後漢王逸『楚辞章句』全巻についての考察をまとめ、『楚辞章句』が提示する屈原イメージの祖型を確認する。また並行して初年度に行った朱熹『楚辞後語』の検索作業の確認も進める。連携研究者・澁澤尚は、引き続き楚の巫祝文化における酒俗について、享楽・医学・祭祀の側面からの考察を行う。また研究協力者・野田雄史は中国語学の観点から楚の文芸の実態を探り、同・田島花野は『楚辞』の「招魂」と「大招」を計量分析的に比較し、検討を行う。

 年度末には全体研究会を開催し、各メンバーの研究を有機的に関連づけるべく統括と調整を行う。

2 海外研究協力者の聘日

 平成22年度中に富山で海外研究協力者2人を招聘することとし、受け入れの準備を進める。1週間程度の滞在を見込み、この間に日本側の研究メンバーが集合して当該協力者との研究交流を行うとともに、当該協力者による学術シンポジウムを行い、中国での最新の研究成果を広く知ってもらう予定である。

 なお、万一社会情勢の急変等で聘日や訪中が不可能になった場合は、Eメール等の手段で中国側メンバーと連絡を取り合いつつ、日本側で行える個人・共同研究を優先して行うこととする。

今日昨日合計
166081